育児の毎日は大変ですが、子どもたちの笑顔は、そんな苦労を吹き飛ばし元気をくれますよね。この知恵袋ではそんな親と子の笑顔をたくさん増やすためのヒントをいっぱいご紹介いたします。

(※ここで紹介するあそびは、仲田安津子先生の著書「こどものおしごと(講談社)」から抜粋してあります。)

仲田安津子 プロフィール
 
瑞穂野保育園理事。御苑学園幼児ルーム元主事。乳幼児のハートを独特の魅力でひきつける保育の達人。日本女子大学卒業後、同附属豊明幼稚園勤務。以来、現在まで「生涯現役」の信条で保育の現場で活躍。

穴のむこうに、ナニがある?


 1~2歳の子どもが、そろって興味を示すものに穴があります。穴を発見すると、近寄っていって、指を入れてみる、のぞいてみる、なにかを投込んだり、つっこんだりしてみるというのが、この時期の子どもの特徴的な行動パターンです。

のぞいて何かを見てみたいという好奇心、ものを入れると見えていたものが、消えてしまうというおもしろさ。穴は、このころの子どもの探究心をくすぐる素材なんです。
散歩の途中でしょうか。道路の側溝にかけてある安全柵に興味を示して、小石などをポトンと落としている子をよく見かけます。溝がつまっては大変なので、一個だけは大目に見ても、あとは、家庭でのあそびで体験させてあげるといいですね。
段ボール箱やミルク缶のふたに穴をあけて、子どもの身近においておいたり、ペットボトルの口を穴に見立ててあそべるように工夫してあげれば、一人ででも集中して熱心にあそびます。今したいことを、自分のペースで出来る環境を作ってあげましょう。これこそ能力を育てる最高の方法なんですよ。

せまいところ 大好き

 子どもって、どうしてせまいところに入りこむのが好きなんでしょう。おたくのお子さんはいかがですか。そんなようすを見て、ママのおなかのなかにいたころの安心感を思い出すから、という人もいるんですよ。
気がつくと、とびらのあいたクローゼットのなかにしゃがんでいたり、テーブルの下に入りこんでママのスリッパを引っぱったり、大好きな肌がけぶとんを引きずっていき、パパの机の下でニコニコしているのを見たりすると「巣ごもりですか?」なんて声をかけたくなってしまいます。

そこで提案。
押し入れに、子ども専用のあそび場コーナーをつくってあげたらどうでしょう。不用品はこのさい整理して、バザーやフリーマーケットでリサイクルすれば一挙両得。「そんなことは、できな~い」というときは、電気やさんなどで、大きな段ボール箱を調達して、子どもハウスを手作りしてあげても大喜びするはず。
ママが、ときどきコーナーをのぞいて「トントン、トン!だれですか~?」「なにをしていますか~?」などと声をかけるだけで、一人でよくあそぶでしょう

むいたり はがしたり


 指先を使って、小さなものがつまめるようになった子どもは、皮をむいたり、はがしたりすることにすごく興味をもちます。これらの動作はとても高度な手先の運動。だって、むくためには、つまんで引っぱるという2つの動作が必要だし、引っぱる方向も見極めなくてはいけませんからね。

なんと、子どもは、手先の器用さのレベルアップを、自分からすすんでやりたがっているわけです。子どもだって自主練の達人です。
手先を器用に使うというのは、歩行、イメージをうかべることの2つとともに、人間が人間であるあかしといわれます。1歳半ごろには、両端をねじってあるお菓子の包みをあけることができるようになり、2歳ごろには、みかんやバナナなどの皮もむけるようになります。おやつに出してあげると喜んで挑戦するでしょう。

子どもには、生活とあそびの境界線はありません。いってみれば、おきている時間はすべてが発見とチャレンジの時間。
生活のなかにもあそび感覚をとりいれ、いろんなことに楽しく挑戦させてあげたいですね。

ぜんぶ、だしちゃえ!

 子どもが、ある時期、とても夢中になるあそびがあります。でも、それをたっぷり2~3週間もやると、「もう卒業したよ」といわんばかりに、ぴたりとやらなくなるのです。おもしろいですね。いわば、発達に必要なあそびともいえるものかもしれません。

その代表的なものがティッシュペーパーの引っぱり出しでしょう。タンスなどの引き出しや、戸棚のとびらも、そんな時期のターゲットです。うっかりすると、なかのものをぜんぶ出されて、おもちゃにされることもしばしばでしょう。
これは、子どもにとってもは、「まだ出る!まだある」という、自分のなかからわき出る興味に徹底的にとりくもうとする知的な好奇心。できれば自由にさせてあげたいことではあります。ただ、ママにとっては、これが毎日ではたまりませんね。
それに危険なもの、さわられては困るものもあるでしょう。させたくないときは、「だめよ」と行為をとめて、子どもの手のとどかない場所におくしかありません。そのうえで、それにかわるものをあそびとして用意し、好奇心を満たしてあげるといいですね。

出すのがうれしい時期は、お片付けを覚える良いチャンス!

コロコロ ころがして


 動くものを追いかけたくなる。これは、人に残る動物的な本能なのかしらね。ハイハイやアンヨができるようになった子は、みんな喜んで、ころがるものを追いかけ、つかまえることに熱中します。
コロコロころがるものなら、ボールでなくても、筒形のものでもペットボトルでも、ガムテープでも、なんでもいいのです。いろんなものをコロコロころがしてあそんでみましょう。たとえば、ガムテープのようなものは、立ててころがすということも、ママのすることを見て覚えます。
ただ、それがわかっても、うまくころがすのはなかなかむずかしいもの。手首のスナップをきかせる技術がいるからです。でも、くりかえすうちに、それも習得するから、子どもってスゴイ!

1歳代にそうやってあそぶと、2歳ごろになれば、体験から「これはころがる/ころがらない」という特性がわかってきます。ころがらないものも用意してクイズを出し、実験するあそびをしても楽しいですね。また、そのころには、ボウリングのように目標にむけてころがすことも上手にできはじめます。

パッカ パッカ ぶーん

 子どもとあそぶのが、いまいち苦手というパパだって、子どもを大喜びさせることができるのが「おうまパカパカ」や「ひこうきブ~ン」などの運動あそび。これをパパの得意あそびにしちゃいましょう。

気をつけたいのは、子どもを怖がらせないこと。「男の子だから、これくらいは平気」というような勝手な判断は禁物。最初は子どもの表情を、笑顔で見ながら、やさしく動かすのがお約束。動きの迫力は、だんだんにつけていくようにします。
さて、子どものはじめての乗馬。パパの背中でバランスをとるのはむずかしいことでしょう。ママがそばについて体を支え、「パッカパッカ」と声をかけてあげましょう。1歳半をすぎれば、指で洋服をつかむ力もついてきて、1人でのっていられるようになります。

あそびには、それに慣れたころにはあきてしまうものと、慣れれば慣れるほどバージョンアップできるものがあります。人とからみあうあそびはどれも、あとの種類に属するもの。体や言葉でふれあうあそびには、子どもを成長させるパワーがあるのですね。

たかい、たか~い


 子どもの視線の高さってどの程度かな、と考えると、「フーム、ちょっと高いところも見せてあげたいな」という気になりますね。見慣れたものを視点をかえて見るのは、知的好奇心を高めるという人もいますよ。

そういうわけで「たかい、たかい」あそびです。体重もふえてきて「とてもとても」というときには、パパにたのんじゃいましょう。

体がス~ッと高くもちあげられたときって、エスカレーターにのったような気分なのでしょうか。ママちょっと、子どものころを思い出してみてください。「空気が動くような感じで、とてもスリリング!」という記憶がありませんか。小さいころのことでも印象的なことって、体の感じとして残っていくものなんですね。
もし、かかえあげるのが大変なときは、押し入れなどの棚を利用するのも方法です。「たかい、たか~い」とかかえあげて、ポンと棚にのせてあげます。「な~にが見える? 電気、ピカピカ~。時計さん、コッチンコッチン。あるね。見えるね。よかったね」などと声をかけてあげましょう。

グー・チョキ・パー

 「ジャンケン、ポイ」と、声をかけあって順番決めをする子どもたち。ほほえましいですよね。1~2歳の子どもは、ジャンケンには、まだなじみはありませんが、グ-、チョキ、パ-でかわる手の動きや、言葉のひびきに強く興味をひかれるようです。自分も、大きな子のように「やってみたいな」とあこがれる、そんな時期なのでしょう。
ふつうにジャンケンをして「○○ちゃんの勝ち~」などと、あそぶだけでも楽しいのですが、ここではアレンジ版をご紹介します。ママとした豊かなあそびの体験が、のちのちいきてくるのです。

さあ、ジャンケンの指の形で、いろんなものを表現してあそんでみましょう。ママはエプロンの下などに両手をかくし、「な~にが出るかな。ど~れが出るかな?」と歌うようにいいながらスタート。子どもは「グ-が出るかな、チョキが出るかな」とワクワクして、期待したり予測しながら待っています。なかには「チョキ!」なんてリクエストもあるかもしれません。期待にそったり、はずしたり楽しくあそびましょう。

ママの手がおもちゃ(1)あおむしさん


 子どもは、動くものにすごく興味があります。そこで登場するのが「ママの手指」。自由自在に楽しく動き、感触があたたかくて、しかもママのゆかいでやさしい肉声つき。こんな、ホット?なおもちゃであそんでもらえる子どもは幸せものです。
あそび方はとても簡単。たとえば、指全体をニョゴニョゴ動かし、「あおむしさんがいるよ」と歌うようにいえば、ママの指は、もうあおむしさんに変身。それで、「あおむしさんが歩いていくよ。ヨイショ!ヨイショ!」と、中指と人差し指を交互に動かして、子どもの腕や足などをチョンチョンとつつきながらすすめていくのです。

このあそびは、指の動きがゆかいだし、ママに楽しくふれてもらっているという喜びが、子どもを楽しませるのですね。子どもは「いや~」なんて逃げても、ママがやめると「もっと、もっと!」とリクエストしてくることまちがいなし。
あおむしさんだけではなく、カニのはさみやウサギの耳、かいじゅうの手や魔法使いの手など、手指の動きに、いろんな表情をつけて楽しませてあげましょう。

もちゃ もちゃ あそび

 子どもがかなり大きくなっても喜ぶのが、このあそび。
「もちゃもちゃ」というのは、手のひらで体にふれて、じゃれてあそぶというような意味。ちょっとかわいい言葉ですよね。

体じゅうをつまむんだけど痛くない、つねるようにするんだけど痛くない、なでたり、もんだり、さすったり、肌に受ける刺激という点では同じなんだけど、それぞれの感触はみんなちがって、それをとても喜ぶんです。
これは、心を開いて安心できる相手でなくてはできない、特別なあそびなんですね。体をよじらせて、キャッキャッと笑い、逃げては、またママによってきてあそぶ、心も体ももみほぐされて、心の底からリラックスできる遊びといえます。
子どもが甘えてくるときは、たいがいは気持ちが不安定になっているとき。「どしたの?どしたの?」と、もちゃもちゃ。「いくよ、いくよ~、ここかな、ここかな」といっては、もちゃもちゃ。声や動作にはずむような楽しさをこめてあそんであげましょう。
きっとママにとってもいい気分転換になるはずです。

「ママがどうかしちゃった!」と、子どもがおどろくほど楽しくあそびましょう。「いくぞ、いくぞ~」といってワクワクさせ、つかまえて、モミモミ、クニュクニュ。子どもは心の底から楽しい気分で、キャッキャッとほっぺを真っ赤にして、めちゃめちゃの笑顔で喜ぶことまちがいなしです。

だっこして、あそぼ


 子どもって、ママのだっこが大好き。「もう重いのに~」なんてママの気も知らずに、だっこを要求してきます。でも、子どもを抱いて、お互いをのぬくもりを感じながらあそべるのも今だけ。
子どもが「ママ、だっこ」といってきたときは、ただ甘えているのではなくて、不安だったり、眠かったり、さみしかったり、気持ちのゆらぎがあるとき。だからじゃけんにしないで「はい、どうぞ」と、まずしっかりと受けとめてあげたいものです。
でも、だからといって、ずっとだっこしっぱなしではママの身がもちませんよね。いったんは受けとめても、子どもの気分をうまく切りかえて、自然にひざから離れていくようにしてあげるのも必要なことです。

ご紹介するのは、そんなときの、子どもの元気回復あそび。ポイントは、体をぴったりくっつけて抱いてあげること。そして、なんとなく体をゆすってあげながら、たわいない言葉あそびをするだけ。ママが子どもだったとしても、こうしてもらうと気もちがおちつくとは思いませんか。

いない いない ばぁ

 これを喜ばない子なんていないんじゃないかしらと思うほど、小さな子どもはみんな「いない、いない、ばあ」が大好きですよね。「出るぞ、出るぞ」という期待と「出た!」という興奮。予測と結果の一致が、子どもを喜ばすのです。
ママの肉声と笑顔があれば、道具も準備もいらないし、あそび下手とか上手とかも関係なし。子どもとのあそびに困ったときの、お助けあそびともいえますね。
ただ、はじめてやってもらう子どもは、最初、ちょっとキョトンとするかもしれません。でも、何回かくりかえすうちに笑顔がこぼれることまちがいなしです。
そして、ときには、身につけているエプロンのすそ、読みかけの新聞、テーブルやソファー、壁のかげなどに顔をかくしてみたり、ひょうきんな表情で「ばあ!」をしたり、アレンジをくわえると、もっとゆかいにあそべるでしょう。
このようにママと楽しさを共有できるあそびは、子どもの情緒を安定させます。「あなたが大好き」という気持ちをこめてあそんであげたいですね。

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